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BNN – 冷雨 投稿日:2010年10月9日
小雨の中、ドーン(Dawn)は、オルス(Ors)を探していた。
滞在している場所は知っていたのだが、農業に携わる者である彼が一日中そこにいることはないだろう。そう考えたドーンは、手紙の内容の記憶をたどり、気になる場所に立ち寄ってから滞在場所へ向かおうとしていた。
森の中で、ドーンは声をかけられた。
「やっと見つけました。女王陛下」
聞いたことのある声だ。ドーンに対するお辞儀は自然であり、かつ無駄が全くない。城の者に間違いない。
「休暇中に来るなんてよっぽどね?」
「はい。申し訳ございません」
「何かしら?」
「ユーの裁判所から牢獄にかけての一帯で、例の選民を目撃したという情報が増えていたので、シェリー(Sherry the mouse)様が調査へ向かわれたのです。が、最新情報によると、どうもその地域は、現在攻撃を受けているようなのです」
「なんですって!」
オルスのことも気がかりではあったが、牢獄が攻撃されるのはより深刻だ。なぜなら、あの牢獄には「彼」がいるからだ。
「ご苦労でした。すぐに牢獄に向かうわ」
ドーンが牢獄に到着したとき、シェリーの呼びかけに応えた冒険者たちによって、すでに襲撃は鎮圧されていた。鎮圧されてはいたのだが、「彼」がいるはずの部屋には衣服があるだけの状態だった。
「リカルドは? 誰か、彼を見なかったの?」
的確な答えをすることができた者はいなかった。
「そう……。手がかりがないのなら、まずはここから調査しないといけないようですね。手配しておきましょう」
ドーンはもっともらしいことを言った。
リカルドがいなくなったという事実。それだけから彼の行方を探し出すということは、海岸の砂の中から宝石を見つけるのと同じくらい難しそうにも思える。だが、捜索にはこの方法しか考えられないということはなく、またこれが最善のものであるとも断言できないであろう。
しかし、ドーンにとっては、この時点で、この方法を選択することが最善だと思えたのだ。
リカルドがいなくなったという事実。これはもう覆ることはことはない。だが、オルスが今どうなっているかについてはまだ検討の余地がある。ドーンはその不確実な状況を確実なものにするため、牢獄を去り、元の目的に戻ることを選んだ。
また、雨が強くなってきた。
夜が更けるにつれ、徐々にドーンは焦りを募らせていく。色々な場所を当たったが、オルスは見つからない。手がかりすら得られない。ドーンは最後の望みを託し、オルスの滞在場所に向かった。
部屋に入りドーンが目にしたもの。それは、生活感の全く感じられない空間だった。手当たり次第に家具を調べるが何も見当たらない。
突然、ドーンは外へ飛び出し、空を仰いでそのまま立ちつくした。雨粒がドーンの顔を打つ。
空は泣き続けた。
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