BNN – 悲しみの刻

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BNN – 悲しみの刻                     2011年2月23日

シェリー(Sherry the Mouse)は大理石の棺が安置されたテーブルにゆっくりとよじ登った。その棺にはシェリーの最愛の友であるドーン(Dawn)の亡骸(なきがら)が納められている。両側に飾られた花々の中に埋もれるようにしてうずくまると、あふれてきた涙がゆるやかにほおヒゲにつたっていった。ドーンが死んでしまっただなんて、とても信じられなかった。バーチューベイン(Virtuebane)を倒せるかもしれない剣の計画について、こっそりとシェリーに打ち明けてくれたばかりだというのに。

夫のオルス(Ors)がなぜ消息を絶ったのかという不安、そして彼への愛をドーンは口にしていた。彼女はどんなにか夫の捜索に出向きたかったことだろう。しかし、混沌と不安に包まれた今、彼女は王国に必要な存在だった。ドーンは国を率いてあの強大な敵を倒す決心を固めていたが、命を、しかも夫の手によって奪われたのは彼女の方だった。オルスはバーチューベインの呪文で操られていたのだが、呪縛から解かれて愛する妻が足元に横たわる姿を目の当たりにし、しかもその命を奪ったのがほかならぬ自分自身であることを知った彼は、のちに自らも命を断ってしまったのだ。

夜、ドーンに哀悼の意を表すために各地から人々が訪れている間も、シェリーは眠ることなくずっと付き添っていた。ドーンの親友であるダーシャ(Dasha)がやってきて、大理石の棺にやさしく手をのせ、柔らかな声でミーア(Meer)の古の言葉で祈りを捧げるときもシェリーはそこにいた。ザー女王(Queen Zhah)が頭を垂れながら厳粛な足取りで棺に向かって歩く姿も見ていた。女王は鉤爪のある手をやさしく棺にのせ、柔らかな声で言った。「あなたの死は忘れない。あなたの敵は私の敵。あなたの民と友人たちが必ずや仇を討つでしょう。さようなら、ドーン女王」続いてザー女王の軍部大臣であるウスカデシュ(Uskadesh)も頭を下げていたが、その顔にうすら笑いが浮かんでいるのが見え、なんて奇妙な態度なのだろうとシェリーは心の中で考えていた。

長い夜のあいだずっと、シェリーはドーンの亡骸の傍らで付き添った。彼女を信じてくれた人から離れるなんて、悲しくてとてもできなかったのだ。これからの日々何が起こるのか、彼女には判らない。友であり女王である勇ましきドーン(Dawn the Valiant)の棺のそばで丸くなり、泣き疲れたシェリーは、やがて眠りについた。
Bnn110223

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