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BNN – 力の素材 2011年7月12日
ザー(Zhah)は机から立ち、高等学者のプルギロヌス(Prugyilonus, the High Scholar)に頷いた。
「素晴らしい」
ザーは学者から手渡された巻物を静かに開き、ざっと目を通した。
「ドリームサーペントの鱗(Dream Serpent scales)、ドライアドクイーンの髪(Hair of a Dryad Queen)、ソウルバインダーの涙(Soulbinder’s Tears)、清らかなる水晶スイレン(a Pristine Crystal Lotus)、そしてナイトテラーの心臓(the Heart of a Night Terror)? これら、残された5つの素材を手に入れるのが難しくないことを祈っているわ。そう……、我々にはもうあまり時間は残されていないことだし、残りの素材は簡単に手に入るものばかりであればと願っていたのですが……、そうはいかないようね」
「おっしゃるとおり簡単であれば良かったのですが、残念ながら。しかし、差し出がましいようですが、それぞれの生息地も調べてまいりましたので、これがあれば少しは楽になるかと」
プルギロヌスは女王へ別の巻物を手渡した。彼女はそれを開き、目の前に現れたものを見て驚いた。それぞれの生物がどこで見つけられるかが詳述されていたのだ。ザーはドライアドクイーン以外の生物がテルマー内で発見できることを知って喜んだ。この、現役を退いた高等学者は王国の地図上にそれらの地点を書き入れていた。
「これを手掛かりに、明日の朝一番に発ちます」
巻物を丸めてバッグにしまいながらザーは言った。
プルギロヌスは、微笑みながら頭を横に振った。
「女王陛下、それはなりません。あなた様は呪文を解除する時に備え、休息しなければなりません」
ザーは彼をにらみつけた。
「魔法を解除するですって? どういう意味です?」
「我々は呪文が失せるのを座して待つことはできないのです。ザー女王。最後の素材を手に入れたらすぐに、均衡状態にある呪文を崩し、儀式をはじめなくてはなりません。こちらからいきなり停滞呪文を解除してしまえば、不意をつかれたデファイラー(the Defiler)は満足に動くことができないでしょう。つまり、優位に立つことができるのです」
「私が休息を取るとして、誰が素材を集めるのでしょう? まさかあなたではないでしょう?」
「ええ、私ではありません。しかし、そろそろ民や同盟を組むものに頼る時なのだと思うのです。あなた様が強き女王に成長してこられた姿を、私は過去千年以上に渡り拝見してきました。ですが、まだ一つ学ばれていない事がございます。それは、ボイド(the Void)の脅威をお一人で背負いこむ必要はないということです。我々全てはあなた様と共にあるのです。役割は分担できるものなのです。全てを背負わず、我らにご命令ください」
ザーは何かを言おうと口を開きかけて閉じた。溜息をつくと頷いた。
「いつものことながら、あなたの言葉には賢明な教えが含まれていますね。いいでしょう。古き友よ、あなたにこの件の手配を任せましょう」
プルギロヌスは頷いた。
「決して失望はさせません。女王陛下。では、この間に休息をおとりください」
「もちろんです。ああ、それと」
去ろうと向きを変えた学者は、再びザーへ向き直った。
「なんでしょう?」
ザーはほのかにいたずらっぽい微笑みを浮かべた。
「あなたは助言の名手ですから、私の主席アドバイザー(First Advisor)に任命します。いいわね」
プルギロヌスは笑った。
「早速のご命令というわけですな。では、喜んでお受けいたします」
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