BNN – 覚醒 – 第四章

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BNN – 覚醒 – 第四章                投稿日: 2012年5月1日

西側の壁から金属と石がぶつかり合う音が再び響き渡り、埋没した神殿に繋がる穴からまた別の機械生物が這い出してきてガーゴイル防衛軍に襲いかかった。この生物たちだけなら重大な脅威ではないが、僅かなミスが怪我に繋がりかねず、機械生物と違ってガーゴイルたちは自軍を補充できないことが問題だった。それに加え、悠久の眠りにつく主を祀る機械神殿の邪悪で狂気に満ちたコントローラーたちに脱走ガーゴイルたちが合流し、ヴァーローレグ(Ver Lor Reg)は不安定な状況下にあった。猛々しい肉弾戦の音は遠ざかっていったが、それとは全く異質の、それでいて同じくらい熱い戦いが評議会の会議室内で繰り広げられていた。

「我らはこの地の生物に対処した。ヴァーローレグの始まりより。決してたじろぐことはない。やつらを征服しないのは、我らの民にふさわしくはない。ザー(Zhah)の申し出を受け入れることは、適切ではない」

ヴィスレム(Vis-Lem)の革のように堅い翼が立てる音が、ガーゴイルの不快感を如実に示していた。「好ましく寛大なのは、ザーが申し出た避難所と話だ。ヴィスレムよ、失うのは己の力と案じているのか?」

一瞬、ヴィスレムはレスヴォル(Res-Vor)に向かって歯をむき出した。「ヴァーローレグの創立は偉大なる業績、これは控えめな表現にすぎない。機械どもは脅威ではあるが、流入する来訪者が生むのは、大いなる商機……」

アンレルタール(An-Rel-Tar)がカギ爪のある手を挙げ静まるように制し、全員が沈黙した。この老ガーゴイルの声を誰も耳にしなくなってから、かなりの時が経っていた。短く咳払いをして彼は立ちあがり、ストーンテーブルの周りにいる他のガーゴイルたちに身振りで伝えた。「エルフ……、ヒューマン……、そして仲間のガーゴイルでさえも我らの資源を圧迫している。土地や我らの魔法使いによる供給にも限りがあり、イルシェナー中央部が閉ざされている今、多くの資源に手が届かない状況だ。ゴールドは大切だ。それは確かだ……。だが、ブリタニア人が彼らの街中で襲撃者に襲われ、キャラバンが激減しているのに、ゴールドを何に使うというのだ? そのことをよく考えよ、我が友よ……。これは難しい決断だ。我らは絶壁の上に立たされておる。飛び込むような真似をしてはならん」

アンレルタールは伝え終えると、退出するため踵を返した。他のガーゴイルたちは、たとえ他にどんな意見があろうとも、少なくとも今は会議が終わったのだと悟った。

サンレム(San-Lem)は、ヴァーローレグでヒーラーとして数年間を過ごしてきた。それ以前はイルシェナーの荒野を放浪しており、そこで生き延びたことは彼女の危機察知能力と回避能力の高さの証であった。最近街中で起きる数々の小競り合いは、彼女や他の者たちに現状に対する不安を抱かせ、街の賑わいは気休めにならなかった。変化によって変化が起きる……、そう彼女は考えた。そして変化というものは、しばしば暴力的かつ破壊的なプロセスなのである。数週間前にサンレムは決断し、有り金をはたいて糧食や必需品を買い揃え始め、今ようやく準備が整った。このひんやりとした大理石を爪の生えた足で感じられなくなると思うと悲しかったが、心は既に決まっていた。

街のゲートを出て大きな大理石の柱群の間を進む。この柱群はイルシェナーの砂漠をガーゴイルたちが征した証だ。街に最後の一瞥をくれてから、サンレムは羽を広げた。方向を変えて北に向かい、見たこともない道具を持ったヒューマンの小集団の近くを通り過ぎた。彼らは砂漠からざっくりと大量の砂をすくい取っては砂をふるい落とし、岩、石のかけら、古代建造物の大理石などを探していた。彼らの何世代分もの時間を生きようとも、ヒューマンというものは理解しがたい、そう考えて首をふったサンレムは、自らの旅を続けるのだった

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