怪しげな借用書
王室広報官のRiccioです。
今回は、ブリテインのパン屋グッドイーツのSakiちゃんからの依頼。
最近古い借用書が原因で、困っているお客さんや取引先が増えているようです。
その原因となっている業者の尻尾を掴んだらしく、問題解決のために手伝って欲しいことがあるそうです。
開催日時:3月28日(火) 22時00分
集合場所:ブリテイン広場
注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
- イベント進行の妨害、かく乱行為。
- EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!
怪しげな借用書
~プロローグ~
ある日の午後、Sakiが店番をしていると見慣れない男たちが店に入ってきた。
彼らは二人連れで、後ろにいる者は平凡そうな感じの若者だ。
前にいる者はフードを被り、粘りつくような視線をSakiに向けてくる。
それは、冒険者の家が倒壊して荷物が取り放題となる、いわゆる腐り待ちで
場数を踏んでいるSakiでも思わず身構えてしまうほどであった。
男たちは店内に視線をうつし、Sakiしかいないことを確認すると彼女に問いかけてきた。
「お嬢ちゃん、店主はいるかな?」
「この時間はSakiが店主なの!」
満面の営業スマイルで答えるSakiに対して、男たちは一瞬渋い表情となった。
「いや、おじさん達はね、お嬢ちゃんではなくて、このお店の持ち主と話したいんだ」
---
Britain広場から少し北に位置するパン屋グッドイーツ
とある事情で両親はおらず、姉のRiaとSakiが経営を行い、パートさんが1名、計3人でお店を切り盛りしていた。
ゆえにSakiが店主というのは間違いではない。
「おじさん達はね、お嬢ちゃんのお爺さんにお金を貸していてね、今日が返済日になるんだ。意味は分かるかな?」
男たちは来店した目的をSakiに告げると、借用書をカウンターに置いた。
それは見るからに古い物であり、Sakiの祖父と思われるサインが入っていた。
借用書に記載されていた数字は10プラチナ。
郊外で砦が買えるほどの金額にSakiは驚きの表情をさらした。
反応を見たフードの男が笑みを浮かべ話を続ける。
「この通り今日が返済日なんだ。長年の利息や延滞金も入るからこの金額だな。さぁ払ってもらおうか?」
「払えない場合はどうなるの?」
渋い表情のSakiの問いに、男たちは笑みを浮かべた。
それは、ここまでの流れが全て思惑通りに進んでいるためだ。
「その場合は、このお店を手放してもらうことになるな。書類も用意してある」
手慣れた様子で書類を並べ、フードの男が説明し終える。
「わかったの!10プラチナ払うの」
男たちの表情が固まったが、子供の冗談だと思いゆるむ。
「お嬢ちゃん、冗談はいけないね。これは大人の真面目な話なんだ、オレ達は店主と話したいんだよ!ガキの出番じゃねぇぜ」
店主を出させるため、男たちは語気を強め脅しかけてくる。
「本当に持ってるの!」
Sakiは笑顔でいくつか持っている口座で最も残高の少ないものを見せた。
すると男たちは驚き表情に変化する。本当にプラチナが入っていたからだ。
そこには10ではなく30と記載されていた。
「本当にあったでしょ? 払ってもいいのだけど・・・」
驚きの表情のまま、男たちは首を縦に振る。
Sakiはじらすように少し間をとり口を開く
「でも、その証書偽物なの!!」
Sakiは腐り待ちでお宝ハンターとして活躍している。
彼女はとても好奇心が高く、幼いころ立ち上がり歩行できるようになったときから
家を勝手にでてウロウロ。それには親や姉のRiaも手をやくほどであった。
ある日、外に出てウロウロしていると偶然腐り待ちに遭遇しキラキラ光るお宝を手にした。
その時の感動が忘れられず、今では趣味となっている。
それから数年、まだ子供ではあるが業界では名の知れているハンターであり
卓越的眼力と嗅覚でお宝を見分ける能力は大人をも凌駕する。
そのSakiが指摘しているのだから、この証書は偽物である可能性は極めて高い。
しかし、子供に偽物と見抜かれて黙っているわけにはいかない。フードの男は怒気を孕んだ声を放った。
「いい加減にしろガキ!どこが偽物なんだ」
「特殊な薬品の臭いがするの!それと紙も昔の物とは全く違うの!」
Sakiは臆することなく、堂々と男たちに向かって口をひらく。
店に入ってからの男たちの表情は目まぐるしく変わり、今はカラクリを見抜かれた驚きの表情に。
だが、相手は子供である。
強く威圧すれば黙らせることができるし、いざとなれば連れ去ればいいと考え、再び表情は変化して余裕のあるものとなった。
「これは偽物じゃねぇ、難癖付けるなら連れ去るぞ」
Sakiが普通の子供であったら驚いて泣いていただろう。しかし彼女は挑発的な笑みを浮かべる。
疑問を感じつつ男たちが更に言葉を発しようとした刹那
「お前たち、そこまでだ!」
背後から見知らぬ者の大声が聞こえ、男たちは二の句が継げないまま振り返る。
「なんだお前ら・・・」
男たちは入ってきた者たちの姿を見て固まってしまった。それは鎧で身を固めたガードであったからだ。
ただ、フル装備ではなかったため、休憩中に店を訪れたようであった。
ややあって、Sakiは手を振りガードに捕まった男たちを見送った。
---
翌日の昼下がり、Sakiが店番をしていると、昨日みたガードが再び現れた。
「Sakiちゃん、昨日は危なかったね。怖かったんじゃないかい?」
「大丈夫なの!ガードのおじちゃん達が買い物に来る時間だし、腐りの方が怖い人たち多いからね!」
このガードは常連客で、男たちが現れた時間帯は、まさに彼らがパンを買いに来る時間だったのだ。
もし他の時間帯に男たちがグッドイーツを訪れたとしても、Sakiは腐り待ちで得た特殊なアイテムで撃退することが容易であった。
「昨日捕まったおっちゃん達は何かしゃべったの?他でも同じことやってると思うの」
「それがな、黙秘を続けているんだ。ただ借用書の相談は他にもいくつかある」
仕事がら、全てのことを話すことはできないので、問題の無い範囲で答えるガード達。
実は最近、常連客や取引先に家を手放したり、廃業する者がいてSakiは気になっていたのだ。
ガードから有益な情報は得られなかった為、Sakiは独自で今回の件を調べ始めた。
そして判明したのだ、家を手放したものがグッドイーツの周辺に数件あることが判明。
古い借用書が原因で、特に恐怖を感じた高齢者世帯に被害が多いようだった。
それと、借用書を持った者たちが出入りしているのが海沿いにあるユニコーンホーンという酒場であった。
これ以上調べるには人でも時間が足りない。
単独調査に限界を感じたSakiは冒険者に助けを求め、被害が広がる前に解決すべく動き出すのであった。
コメント